ポーランドのコペルニクス大学のDuch教授に、「From autism to ADHD: computational simulations」という演題で講演をおこなっていただいた。講演は、自閉症や多動症をニューロンシステムのアトラクターダイナミクスの違いで説明しようとする非常に独創的かつ意欲的な研究であった。
講演の前半では、Duch教授がこのモデルを考えつくに至ったいろいろなレベルの神経科学的なバックグラウンドをご説明いただいた。自閉症・多動症の正確な定義と症例から始まり、関連する脳領域やそれらの領域間の神経接続、シナプスの役割から遺伝子発現まで、幅広いスケールでのお話であった。
それらの背景を基に、人間の行動の違いと生体分子の性質との関わりに着目し、大胆なモデル化をおこなった。健常モデルではアトラクター周辺での安定性が強く、自閉症モデルや多動症モデルでは不安定であることをコンピュータシミュレーションでの結果を受けて紹介された。
Duch教授のモデルに触発されたのか、講演中も多数の質問が飛び交い、活発な議論が展開された。今回の講演は、高次の現象をシンプルな形でモデル化するということに関して非常に有意義なヒントを我々に与えてくれ、大変有意義な講演会であったと考えられる。
日時 | 2010年7月6日(火)17時00分~19時00分 |
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場所 | 玉川大学8号館2階第2会議室 |
報告者 | 福島康弘(脳科学研究所・gCOE研究員) |