今回のブランチ・ワークショップは、海外で活躍する若手研究者を招き、彼らの最先端の研究について話を聞くこと、また、国内の大学院生・ポスドクらが彼らと気軽に交流できる機会を設けることを目的として開催された。当日は、あいにく雪のちらつく中での開催となったが、気取らない雰囲気のなかで大いに議論の盛り上がる会合となった。
Katerina Kantartzisさんはバーミンガム大学の喜多先生のもとで、言語獲得における音象徴性の役割について研究を進める大学院生である。発表では、日本語の擬態語をベースに作られた新奇擬態語を新奇動作にマッピングさせる際、擬態語に含まれる音象徴性が、イギリス人幼児においても適切なマッピングを促進させるという研究等をお話しされた。
Henny Yeungさんはブリティッシュコロンビア大学のJannet Werker先生のもとで、乳幼児の言語発達のしくみを解き明かす調査に精力的に取り組む大学院生である。今回の発表では、主に単語のトーン弁別を題材として、乳児が言語音声に対して生得的にもつ敏感性と経験によって保持される敏感性について、多くのデータを示してお話しくださった。
Jan-Rouke Kuipersさんは、バンゴー大学バイリンガル研究センターにおいて、ERP計測を主軸とした言語発達研究に従事されているポスドクである。期待に反する刺激が呈示される際に観察されるN400という脳波成分に着目し、言語音声とその指示対象の関係を、乳幼児がいつごろから理解し始めるのかを調べた研究等についてお話しくださった。まだ発話の難しい13カ月児でも言語音声とその指示対象がミスマッチの際には、より振幅の大きなN400 が観察されたという。
いずれの研究も今後の言語発達研究を牽引するにふさわしい内容であった。ワークショップ終了時には、和やかな雰囲気で語り合う参加者の姿がみられた。
日時 | 2010年2月13日(土)10時30分~13時10分 |
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場所 | 玉川大学 大学8号館 会議室2 |
報告者 | 宮﨑 美智子(玉川大学脳科学研究所・GCOE研究員) |