本フォーラムでは、「英語を英語で教える」をテーマに、国際バカロレアと社会言語学の立場から英語教育の現状と今後の課題について、2件の講演が行われた。
バーナード恭子氏には、「言語教育の目的と実践」と題し、国際バカロレア(以下IB)における言語教育の概要を解説していただいた。IBの言語教育は目標言語で行われるため、英語についていえば「英語を英語で教える」ことになる。その具体的な実践例は、今後の日本の英語教育を考える上で示唆に富むものであった。
バーナード氏は、会場にいた学生に対して中国語を中国語で教える例を実演され、言語導入期においても、目標言語による実勢的な教育が可能であることを示された。このことが特に講演の中で多くの参加者に印象づけられた様子であった。さらに、こうした学習言語を使用してのコミュニカティブ・アプローチに基づいたIB言語教育の実践についてシラバスと評価も具体的に説明をしていただいた。 猿橋順子氏には、「東アジアにおける英語教育の現状・課題・展望 ~社会言語学の視点から~」と題し、比較英語教育の研究成果として、東南アジアの四カ国における英語教育の現状と課題を紹介していただいた。
トップダウンにより迅速に施策を展開するマレーシア、英語教育計画を国政方針に盛り込む韓国、英語能力格差の解消を模索するタイ、一貫した到達目標と誘引を設定する中国、と多様な取り組みが紹介された。その後こうした各国の状況を踏まえ、日本の英語教育の現状分析と今後の展開が議論された。中でも英語学習の動機付けについて、日本と諸外国では指向性が異なるという指摘は興味深いものであった。今後はこうした点も含めた、より包括的な英語教育政策の議論が必要であるとのご指摘であった。
講演後に、参加者を交えての議論が行われ、「英語を英語で教える」ことを実践するには多面的な取り組みが必要であることを改めて認識する良い機会となった。
日時 | 2009年2月10日(火)13時00分~15時40分 |
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場所 | 玉川大学5号館340番教室 |
報告者 | 梶川 祥世(玉川大学リベラルアーツ学部・助教) |