【レポート】
第9回 「脳と心のメカニズム」冬のワークショップ

第9回 「脳と心のメカニズム」冬のワークショップ

プログラム

 今回のワークショップは、「Large-scale simulations and database in neuroscience」というテーマであり、初日のセッションはJames Kozloski氏、Sebastian Seung氏、Marcel Oberlaender氏による、神経組織構造のモデルにおける回路接続を識別し、データベース化するための並列処理、およびその計算上の必要条件を評価する手法や、2つのニューロン間の接続をモデル化する手法などについての報告があり、非常に興味深いものであった。

 また、神崎亮平先生の昆虫の身体に潜む感覚、処理、運動能力を手本に、その分析結果を昆虫と機械を融合して検証し、哺乳類の脳モデルとする研究や、小早川令子先生の遺伝子操作によって特異的な神経回路を除去することで、哺乳類の脳が情動や行動を引き起こす原理の解明を目指す研究など、本ワークショップは私の今後の研究にとても役に立つものであった。

 講演会終了後のポスター発表では、それまでの講演会場の雰囲気とは一変して和やかな雰囲気の中で行なわれる。本ワークショップは2泊3日の泊りがけで行なわれるため厳しい時間の制限もなく、参加者も実験と理論研究の第一線で活躍している多くの研究者やポスドク、院生などとその顔ぶれも広いことから、通常の学会や研究会とは違って、じっくり議論しつつ様々な視点からの指摘やアドバイスなどが得られることも多い。これは本ワークショップの特徴のひとつであると思う。さらに、ポスターセッション終了後はコテージに集って2次会が始まるのだが、そこでも皆で「今日の講演の・・・」、「さっきの議論で・・・」といった会話をしたり、現在の研究、研究環境、将来の不安などについて意見交換をしながら多くの参加者と親睦を深めることが出来た。そして、先輩研究者や同世代の院生が研究に取り組む姿勢などを知ることで、互いに刺激し合ったり、自身の研究に対する姿勢を見直すなどして、とても有意義な時間を過ごすことができた。

 脳と心のメカニズム冬のワークショップは、講演やポスター発表を通じて最先端の研究を聴くことが出来るだけでなく、自身の研究についても多くの分野の方と様々な議論が出来る。さらに、ワークショップ期間中、多くの先生や研究者の方々、同世代の院生などと研究の事はもちろん、論文や将来の事について色々と話をすることで、自身がこれから研究を進めていく上で、とても良い刺激を得ることも可能である。今回のワークショップで得られた貴重な経験を、今後の研究活動に十分に生かしていきたい。このような貴重な機会を与えてくださったGCOEプログラム、ならびに「脳と心のメカニズム」第9回冬のワークショップ関係者の皆様に深く感謝いたします。

日時 2009年1月13日~15日
場所 ルスツリゾート(北海道)
報告者 横山 絢美 (玉川大学大学院工学研究科)