【レポート】 若手の会談話会/2011年8月

『運動イメージによる両側性転移について』雨宮 薫氏
『擬人化表現を利用した人間の認知能力補助システムの開発』大澤博隆氏

「運動イメージによる両側性転移について」
  雨宮 薫氏 (東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻感覚運動神経科学教室 大学院生)

「擬人化表現を利用した人間の認知能力補助システムの開発」
  大澤 博隆氏 (慶應義塾大学理工学部情報工学科 助教)




 若手の会70回という記念すべき会において、東京大学医科学系研究科の雨宮薫さんと、慶応義塾大学理工学部情報工学科の大澤博隆先生にそれぞれご自身の研究を紹介していただいた。

 雨宮さんには、「運動イメージによる両側性転移について」という題目で、運動学習における両側性転移効果に関する神経基盤(NIRSとfMRI)を調べた研究についてご発表いただいた。具体的には左手で行った学習が右手に転移するという両側性転移効果が、実際に運動を行わなくてもイメージトレーニングによって促進すること(むしろデータによってはイメージトレーニングの方が実際にやるよりも効果がある)を綺麗な行動データで示し、NIRSとfMRIによってこの両側性転移効果に関する神経活動、特にfMRIではその責任部位について探索を行っておられた。多くの脳機能イメージングの研究は、脳のデータの解析に力点が置かれることが多かったが、雨宮さんの研究は両側性転移効果がイメージトレーニングで生じるという行動データを非常にうまく出しており、今後、リハビリなどの臨床場面に実際に応用できる期待を持たせるものであった。

 大澤先生のご発表は、「擬人化表現を利用した人間の認知能力補助システムの開発」という演題で、様々な家電に目と手のモジュールを取り付けることで、その家電を擬人化するという非常に斬新で野心的な研究についてご紹介いただいた。ロボットを作る研究は数多とあるが、家電そのものをロボットにするという発想はこれまでに全く無く、このような課題でデータをとられている大澤さんはまさにこの分野のパイオニアであった。正直、まだその有用性や効果については未知数のところが多いが、新しい研究を自ら作り上げていく大澤先生の研究姿勢には大変好感が持てた。

 以上のように、二人の異なる分野の研究者の方に同時に発表してもらったため、当初は分野が違い過ぎるかもという危惧も若干あったが、実際には講演会やその前の大学見学、講演会後の懇親会後で発表者や参加者の交流が活発になされ、参加者全員に刺激のある若手の会になったように思われる。

日時 2011年8月8日(水)16:00~18:40
場所 玉川大学研究センター棟1階 セミナー室
報告者 高橋 英之(玉川大学脳科学研究所)