今回、海馬における非線形振動モデルの第一人者である山口先生をお迎えして、講演いただいた。今回の講演では、20名を超える学内参加者と3名の学外からの若手研究者(東大・慶応の大学院生)が参加した。
まず、振動を用いての情報処理を行う上での基礎知識を丁寧に、あまり数式を使わずに説明いただいた。いろいろな分野の大学院生やポスドクが集まるこの談話会において、分野の初心者にもわかりやすいイントロダクションをしていただくことは、非常にありがたいことである。私自身は、比較的専攻分野が近いこともあり、大まかに理解していたつもりだったが、改めて自分の理解を系統立てておこなうことができた。
講演中、ニューロンの発火の振動子的な性質を考える上で、カップリングして発火していなかったものがどうカップリングして発火していくか、についてモデル化し、一般化していくというプロセスの大事さにおける説明を受けた。このような研究が、神経活動の中で発火頻度に注目しがちな生理学的な脳研究に対し、新しい視点を与えてくれると考えている。
山口先生は、生体の環境に対する適応的知性はどのように生まれるのかという問いかけから脳神経系の非線形システムとしての特性に注目するしており、特に海馬神経回路のシータリズム等についてくわしく研究をしている。本公演では、山口先生のグループの最近の実験的展開を整理し、ラットの海馬のデータからのシミュレーション、およびヒトのfMRIと脳波の同時記録のデータを提示していただくことにより、認知機能を生み出す脳の数理について多段からの考察をしていただいた。知性がどのように脳内でできるかを問うことは、「知・情・意」の脳機構を明らかにすることを重点において本GCOEプログラムの中で、非常に重要なテーマである。発表途中の質問も含む本講演における活発なディスカッションは、GCOE関係のプログラムを遂行する上で、非常にプラスになったと考えられる。
日時 | 2010年2月16日(火)17時00分~18時30分 |
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場所 | 玉川大学8号館 第2会議室 |
報告者 | 福島 康弘(玉川大学脳科学研究所・GCOE研究員) |